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庭のデザインと雑木の庭2

現在、私が多く手がける庭に雑木を使い野山の景色を切り取ったかのような、いわゆる雑木の庭があります。

前述したように、私自身としてはその場の必然より導きだされたデザインや構成に基づいて庭づくりを考えていますが、私の実際の庭づくりにおいても、また現代における都市部の庭づくりにおいても雑木を使った庭が主流になりつつあるかと思います。そのことには流行りと言う言葉でかたづけられるものではなく、やはりある種の必然性があってのことかと思います。

結論を端的に言うと、雑木の庭とは都市化が進んだことにより個人の所有する敷地が小さくなったことが大きな要因となって生まれた現代の庭園様式だと言えるかと思います。

近代までの日本の庭の基本構成を考えてみると、坪庭や露地の庭を別として、建築物からの視点より周囲の自然環境を遠景として切り取り、その切り取られた遠景を背景にして中景としての庭を主として構成されてきました。

建築物から庭の全体を見渡せる距離に構成された中景に庭としての力点が置かれたことにより、庭石の配置や園路、植栽などによる構成美に庭づくりの主眼が置かれ、そこで使われる素材自体もそれ自体が造形的である松や槙などの仕立物の常緑樹、刈り込みものなどが多く使われ、石材なども存在感の強いいわゆる銘石などが多く使われてきました。そこにはその距離感、構成だからこそ成立し使用しうる素材の必然性などがあったかと思います。

かわって現代における庭づくりとは多くの場合、都市化により遠景はのぞめず、敷地(特に建築物からの奥行き)が狭くなったことにより近代まで主流であった中景の庭のスペースが確保しづらくなり、建築物からの近景を主とした庭のかたちが主になっているかと思います。必然的に庭木や石材など庭の構成物と建築物の距離が近くなり、中景の庭を構成していた要素や美的感覚をそのまま適用させることは様々な点で問題が生じることになりました。建築物からの奥行きが狭くなったことにより、かって遠景、中景、近景の3つの要素により構成され表現されていた庭の空気感を近景の限られた空間の中に表現する必要性が迫られ、建築物の近くの植栽の必要性、重要性が以前よりもはるかに大きくなりました。

その結果、中景の庭において構成美をつくりだしていた松や槙、モッコクなどの常緑樹や、造形的に丸や四角に刈り込まれた庭木に代表される、古典的な技術によって仕立てられた庭木や、中景において庭の構成の中心として空気感をつくりだしていた、いわゆる銘石などの近距離で見るには主張の強い色味やテクスチャーを持った古典的な庭の構成要素を現代の建築物と敷地構成における庭のなかでうまく扱うことが難しくなってきました。

つまり、当然のこととしてものの見え方とは対象に対する距離感などにより全く違うものになり、そういった意味において現代の庭においてもそのような古典的な庭の構造や素材に多くの場合において必然性が薄れてしまったということだと思います。

つづく


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